そーっと抱っこして窓に近寄ります。 5月の爽やかな風の中、もうあまり見えてはいない瞳が それでも 遠くを見つめます。 チロ・25歳のおばあちゃん猫は 静かに息をつなげて 風を確かめているかのようです。 捨てられていたお母さん猫から 私が取り上げるかのようにして生まれた5匹のうち4匹は貰われてゆき、残った1匹はぶらな目をした独立独歩で 落ち着いた猫でした。
長い年月の間に 何匹か 来て逝ってしまった新しい犬たちには、いつも自分の方が長いんだよ‥と堂々とした威張りようで、けれど、変わらずそこにいながらも、たくさん捕まえたネズミにも、駆けのぼったカーテンも、いつのまにか 気にしなくなって寝ていることが多くなっていました。
手も足も自由に動いてくれない中にも、おしっこに行こうと、小さく鳴き声を上げます。 抱っこするとゴロゴロと鳴らす喉声も、小さいながら・・ 精一杯伝えようとしています。
野山は 緑に埋もれるようです。 白い シシウドの花が咲き、ヤマボウシの清楚な木の花がさわさわと風に揺れています。 その清々しさに戸惑いながら、こんなにも長く傍らにいてくれた小さな温かさをそーっと抱っこして、窓辺で共に聴きます。 遠く アカショウビンの声が聞こえます。