桜と鬼っ子“
野原で遊ぶ動物たちも、樹々で歌う鳥たちも、
みんな、消えていなくなった・・・。いきものたちを苦しめて、
勝手気ままな人間たちは いったいなにがほしいんだろう・・・・・・・”
ちいさなちいさな鬼っこは、ポトリ、ポトリと涙を落とした。
年老いた、大きな桜はこう言った。 花を揺らしてこう言った。
“大きな風に、こごえる雪に、わしは、ずーっとここにいた。
人間たちの優しさも、人間たちの愚かさも、見続けながらここにいた。
大地に根を張り1000年たった。
諦めずに願い続ける。 きっといつかは、気付いてくれる。
本当に豊かなものはいのちだと・・めぐりめぐるいのちこそ、
未来に続く希望だと、きっといつかは気付いてくれる。
だからお眠り、鬼っこよ・・・・“
いく月も、いく年も、大きな桜のふところで、眠り続けた鬼っ子は、
ある朝、まぶしく、目が覚めた。
キラキラ輝く陽のなかで、小鳥たちが歌っていた。
見渡す限りの野原には、いろんな色の花たちが、笑いながら揺れていた。
                       
             (福島・三春の滝桜に)