ポキポキと枝が折れてきたのだった。 太い枝も 脆くなってしまっていて、風の強い日の後など,根方には いっぱいの枝が折れ重なるようになってしまった。あんなに見事に枝垂れの枝を垂らしていた樹が ちいさく細くなってしまっていた。 枝は苔に覆われ、フカフカの柔らかさになっていた

「切らんならんね‥」ようやく決断がついた。3,4年前から、勢いがなくなってきたなと思いながらいたのだけれど、昨年 少し遅めながらもいっぱいの花を咲かせてくれた。そうして 葉っぱは、もっと遅く数枚をようやく広げたのだけれど、チリチリと茶色くなって縮れてしまった。それでも復活の葉っぱが1枚でも見えないかと目を凝らし続けていたのだけれど・・ 今年の春に緑の中に灰色を見るのがつらかった

チェンソーで 太い枝から順番に切って、太い幹を根元から切った・・ド―サーッと音を立てて、倒れた。桜の香りが濃く漂った・・。

35年余り前にこの場所に居を定めて、そうして細い背丈ほどの紅枝垂桜の苗を植えたのだった

我が家のシンボルツリーだった。グングン太って,毎年、それはそれは奇麗に花開き、滝のように揺れ、花を舞い散らせた。風の中でさわさわと葉っぱの茂った枝を揺らせた。 雪の中でもそこは静かな空間だった。友人達がいつ咲くか楽しみに思ってくれていた。いつかその下で眠りたいとも思っていた。

「長い間、有難う 」  手を合わせた。 樹を囲んでいっぱいの写真がある。子ども達と共に大きくなり、その下で孫を抱いて、風を聞いていた。本当に生きていてくれた。       なじめない間の抜けた空間が目に痛い