おおきな、桜

ちいさな、鬼っ子

桜と鬼っ子“
仮設住宅を訪れた折に
川内村の自治会長さんが 三春の滝桜の染を見たなら、
お年寄りたちの元気が出るやろうなーーーと言われたことから
いつかは染めれたら・・と願っていた半年余りでした
けれどあまりに大きな桜の存在感は
挑戦すること自体が申し訳ない思いでした
けれど 見てしまって、
何回挑戦してもできるものではないのだけれど、
染めてみたい・・という思いは募りました
樹のなかに、何かがすんでいるようにかんがえながら 色を挿していましたがある日の午後
ポッと子鬼と老いた桜の樹の会話が浮かんできました・・・・・。
野原で遊ぶ動物たちも、樹々で歌う鳥たちも、
みんな、消えていなくなった・・・。いきものたちを苦しめて、
勝手気ままな人間たちは いったいなにがほしいんだろう・・・・・・・”
ちいさなちいさな鬼っこは、ポトリ、ポトリと涙を落とした。
年老いた、大きな桜はこう言った。 花を揺らしてこう言った。
“大きな風に、こごえる雪に、わしは、ずーっとここにいた。
人間たちの優しさも、人間たちの愚かさも、見続けながらここにいた。
大地に根を張り1000年たった。
諦めずに願い続ける。 きっといつかは、気付いてくれる。
本当に豊かなものはいのちだと・・めぐりめぐるいのちこそ、
未来に続く希望だと、きっといつかは気付いてくれる。
だからお眠り、鬼っこよ・・・・“
いく月も、いく年も、大きな桜のふところで、眠り続けた鬼っ子は、
ある朝、まぶしく、目が覚めた。
キラキラ輝く陽のなかで、小鳥たちが歌っていた。
見渡す限りの野原には、いろんな色の花たちが、笑いながら揺れていた。