ムク

ちょっと年取ったムク

ムクは、段ボールの中に捨てられていた犬だった
夫は、寝ているのをそのままに膝の上に乗せて運転し帰ってきて、
立たせてみて,初めて足が短いことに気が付いたのだった。
それはそれで、まことに可愛いかった。
真黒なくりくりした瞳で
真っ白なふさふさした毛で 手足を万歳の形で寝ていると
アザラシの子供としか思えないような・・とてもとても 可愛かった。
コーギー犬と 毛足の長い真っ白な犬のミックスだったのだろうか
ふさふさの毛で, よく杉の葉がひっかかった
ムクを目当てに 遊びに来る子供たちが増え、我が家へ来られたお客様は
決まって、短い脚を笑いながらムクの写真を撮っておかしがった。
みなにかわいがられ、人懐っこかった。
長い間の 我が家のアイドルのムクも 17年を迎えていて
寝ていることが多くなった
あれほど喜んだボールにも知らん顔になったころには 目も耳も不自由になっていた
夫との散歩で トロトロと歩きながら 立ち止まってボーッとしている2人連れは
よくその呑気さに 出会う人に笑われたものだったが、その散歩もだんだん短くなってしまった
この頃は 方向がわからなくなって、犬小屋へ戻れないことも多くなって
花壇の中、出られないといって、紐が絡まったといって、途方にくれて鼻を鳴らす
時に自分たちの行く手を見るようで、何ともいえず
哀れさといとおしさがないまぜになってしまう
ムク、匂いを頼りにすり寄ってくるムク、がーんばれ
飼い主も 毛も白くなり、薄くなったけれど、まだまだ ともに歩くからね
夜中に何度起こされても、おしっこやうんこの場所が分からなくなっても
ムク、がーんばれ 食欲はまだまだ・・
私たちがもらったありがとうは、まだいーっぱい蓄えがあるからね